【新入生の皆さんへ】学科長挨拶

新入生の皆さん

いつもの年であれば、希望に満ちた新入生の笑顔で溢れる四谷のキャンパスが、
今年は人影もなくひっそりとしています。大学生としての生活の始まりを心待
ちにしていた皆さんと同じように、私たち情報理工学科の教職員も、皆さんと
共に勉学に勤しむ日々を楽しみにしていました。

今年はその始まりが2か月ほど先延ばしとなりました。それでも、皆さんを迎
える私たちの思いには、いささかの陰りもありません。

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

あらゆることが抑制的にならざるを得ない中、皆さんの気持ちも塞ぎがちかと
思います。日々の報道に接すると、心の中の不安はますます大きくなるでしょ
う。そのような先行きの見えない状況を打開して以前の平穏な生活をとり戻す
ために、情報技術に携わる多くの人々が奮闘していることに皆さんは気付いて
いるでしょうか。

厚生労働省は、国内8300万人の利用者数を誇るLINEと協定を結び、利用者の健
康状態と共に、年齢や性別、居住地域を訪ねるアンケートを3月31日に開始し
ました。集められたビッグデータは、集団感染(クラスター)の発生の早期感
知や感染拡大の防止に活用されることになっています。また、位置情報の提供
に同意したユーザのデータを解析した Google は、テレワークの推進状況や不
要不急の外出自粛の状況を、都道府県別に数値化することに成功しています。

新型コロナウィルスに対して有効なワクチンや治療薬を、人類はまだ見出せて
いません。しかしながら、従来の医薬品や薬剤に関する膨大な量の治験データ・
利用データの分析から、今後試してみる価値のあるものが絞り込まれつつあり
ます。新薬としての有効性が期待される物質の発見も、候補となる物質の組成
や実験から得られたビッグデータに対する処理によって飛躍的に促進されるこ
とでしょう。

新入生の皆さんには、このような数々の取り組みを目に焼き付けておいて欲し
いと思います。

人類の直面する多くの問題には、正解が無いか、あっても正解がすぐにはわか
らないものばかりです。しかも、それらの多くは何の前触れもなくやってきま
す。そのような問題を前にしたとき、私たちの持つ力はあまりにも非力で、何
が役に立つのかさえ分からないことの方が多いかもしれません。けれでも、そ
のような困難を人類は一つ一つ乗り越えてきました。それを可能にしたものが
何であったかに思いを巡らして欲しいと思います。

新入生の皆さんはこの春、上智大学情報理工学科で学ぶことを選択されました。
この学びの場で、情報に関する学問を通じて、既存の知識だけでなく「新たな
知を生み出すための知」を身につけてください。それこそが、まだ見ぬ問題に
先陣を切って挑む力の源泉となります。そのような学びを修めた皆さんが、人
類の直面する諸問題に挑むリーダーとなることを期待しています。

情報理工学科長 澁谷智治